「MEET the WONDER CHRISTMAS」〜不思議の国のアリス〜
百貨店は魔法で溢れている ー街を照らすわたしたちからのプレゼントー
亀山 和廣阪急阪神百貨店
応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください
巨大ターミナルビルの中心にある阪急うめだ本店のコンコースウインドーは、「劇場型百貨店」というコンセプトに基づいて、店のテーマやメッセージをアート性をもって伝えることに注力しています。幅6m×高さ4mの巨大ウインドーが7面連続で設置されているため、コピーペーストのワンデザインではなくストーリー性のある7つのデザイン構成が不可欠で、遠くからのインパクトと、近づいた時の完成度の高いクリエイティブが必要となってくる。「MEET the WONDER CHRISTMAS」〜不思議の国のアリス〜は、コロナ禍で元気がなくなった街を明るく照らすクリスマスプレゼントのひとつとなって、思わず“笑顔が生まれる”小さな奇跡がはじまる。というコンセプトで制作しました。
主人公アリスがウサギを追いかけ不思議の国に迷い込み、不思議な食べ物を口にしては大きくなったり小さくなったり。へんてこりんな出来事に巻き込まれても持ち前の行動力と勇気で困難を乗り越えて行くアリスの姿が、この時代に必要なメッセージだと考えました。「糸」によって人から命が伝わり動き出すマリオネットは、テーマで最も重要な要素のひとつです。
ウインドーの中を動き回る100体以上のマリオネットは、プラハ在住で舞台人形美術家の日本人作家、林由未さんによるもので、それぞれの物語に合わせた硝子面のグラフィックデザインはゴービースタンプの大下範子さんのオリジナルスタンプによるものです。
それぞれのアーティストと半年の間、ウインドーデザインとオリジナルストーリーに基づいて、キャラクターデザインとイメージの調整を繰り返し行った。幅6m×高さ4mと巨大なウインドーのサイズであるが、奥行きの有効寸法が約1m程度の狭さで、糸の付いたマリオネットと造形を組み込むには厳しい条件であり一番の課題であった。
1/23スケールモデルを制作しマリオネットの糸と造形が干渉しない配置、大きさと奥行き感を出すアイデアと舞台美術の知識で課題解決に向けて検証を繰り返しベストを探しだす。設置ひと月前に1/1スケールでシミュレーションを行いマリオネットの配置や構成を細かく調整しライティング計画も同時に行うことで、設営時間の短縮につなげた。
お披露目当日の朝7時に完成し、10時に百貨店がオープンするとウインドー前のステージに子供たちが登り、魔法にかかった様に額をピッタっとガラスに押し付けながら動かない子供たち。真剣に覗き込んでいる姿を見るていると感動を覚え涙が出そうになる。この作品が子供たちの記憶に残り、親になった時に思い出し子供に語り継がれる物語になればと願っています。
アリスの魔法にかかったみなさま。
百貨店はいっぱいの魔法で溢れています。
どうぞ中へ。
Question01
空間デザインの仕事の中で一番好きな事は?
アイデアを整理しながらノートに線を引く瞬間がワクワクしますね。
Question02
空間デザインの仕事の中で一番嫌いな事は?
変更できない案件を処理するだけの仕事。
Question03
クライアントとのやり取りで印象に残ってるやり取りはありましたか?
クライアント側なのでなんとも言えません。
Question04
受賞作品においてコロナの影響はありましたか?
チェコからマリオネットを日本へ送る航空便と人件費の高騰のため経費が圧迫された事です。
Question05
空間デザインで社会に伝えたいコトは?
リアルメタバース(現実的仮想空間)の推進
デジタルだけに頼るのではなく現実的仮想空間の中に巻き込まれる楽しさを伝えたい。
Question06
空間デザインの多様性について一言
空間デザインにはborderはなく自由に遊べる free space
Question07
空間デザイナーを目指す人へのメッセージ
与えられたテーマに添いながらも、あらゆる角度考え眺め入り込みオリジナルを生み出すことが大切な仕事だと考えています。
空間デザインは形になり存在する訳ですから見て感じてもらえ反応がすぐにわかる面白さを秘めています。そしてどんな魔法の粉を振りかけみようかと考えるのが楽しいと感じています。
PROFILE
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亀山 和廣
阪急阪神百貨店
阪急うめだ本店
ストアデザイン部アートディレクター
1972年阪急百貨店 装飾部にデザイナーとして入社以来、
多数の店舗改装のほか、阪急メンズ東京などの新店舗の立ち上げに参画し
うめだ本店の全館装飾デザイン及びコンコースウインドーデザインを手がけている。
フェリシモ「神戸学校」にゲスト講演のほか「日本展示学会」などの講演